屋上緑化はなぜ必要なのか
屋上に緑を配置することで現代社会における人の活動がもたらす、様々な地球環境への負荷を軽減できると言われています。
過去の ニュースステーション(テレビ朝日 2006.08.10放送)においても屋上緑化が話題とされ、実際に屋上緑化が行われている建築群と、行われていない 建築群を、サーモグラフを用いて比較していました。これによれば、いかに屋上緑化が熱を遮断しているか一目瞭然であり、改めて屋上緑化が現代社会において 重要な環境施策であると認識できました。
では、屋上緑化を行うことで建築物の構造温度が低下する事は、どういった環境改善効果を得ることができるのでしょうか。
(1)都市の環境改善効果
・ヒートアイランド軽減効果 ・大気浄化効果
・都市下水道の負荷軽減効果 ・景観向上効果
(2)経済的な効果
・省エネ効果 ・建築物保護効果 ・PR効果
(3)心理的・生理的な効果
・豊かさや安らぎ感の向上・園芸セラピー
・環境教育的効果
ただし京都議定書では、いわゆる二酸化炭素固定化に関して、屋上緑化は草類が主体となる緑化手法であることや、現存森林における固定量と比較して極 めて微量の効果しか得ることができないことから、一般的に屋上緑化がもたらす環境改善効果には、二酸化炭素固定は含まないものとしています。
上記各種の効果の中で考えてみると、地球規模ではどれも必要なものではありますが、実際日常の生活規模での効果は何が考えられるのでしょうか。言い換えれば、入居者にとってどのような利点が生じるのでしょうか。となるでしょうし、建築物保護効果はマンションオーナーにとって魅力的な要因であるものと考えられます。この結果、その物件が環境に適合し時代の要求を満たした、付加価値の高い物件であるというPR効果を生み出すこととなります。
省エネ効果は賃貸分譲どちらでも入居者にとって魅力的な効果
次にそれらの効果がもたらす、具体的な内容について示すものとします。
省エネ効果が期待できる屋上緑化
右図は夏季における屋上面の温度について、屋上緑化を行ったものと行わないもので比較した図を示しています。これによると、屋上緑化を行った建物は、気温が上昇する日中で緑化を行っていない建物より大きく屋上面の温度は低いものとなっている。特に日中の気温がピークを向かえる12~13時前後では30℃以上の差となっています。
これは屋上緑化で必要となる植床土壌が建築スラブに熱を伝えないことに起因しており、特に緑化に対する灌水を過不足なく与えることで、熱の躯体伝導を大きく減らすことができるものと考えられます。
屋上面の温度を下げることができれば、必然的に建物内部の温度が下がり、エアコンなど空調設備の稼働率を減らすこととなり、電力や重油などエネルギー媒体の節約となります。
近年、緑化による荷重を軽く抑える事が可能な、浅層によるセダム緑化を行った室温、天井温度と、緑化を行っていないものを比較すると右に示したように、最大で3℃程度緑化を行った方が低くなります。比較的乾燥に強く水を必要としないセダムを用いてもこの程度の差が生じており、灌水を適宜行うことでより大きな効果が得られるものと考えられます。
そこで私たちは、
(1)緑被率を大きくとり、熱の躯体伝導を抑制すること
(2)最小限度の植床土壌厚での緑化を行い、イニシャルコストの軽減を行うこと
(3)芝生や地被類を多用することで、薄い植床土壌厚でも緑化が可能となること
(4)自動灌水装置を利用することで、室内温度の低下を図ること
以上4つの基本的な方針の基に、省エネを目的とした屋上緑化を目指しています。
建築物保護効果に繋がる屋上緑化
屋上緑化がもたらす建築物保護効果の1つは、前述した熱の躯体伝導を抑制する断熱効果によるものであると言えます。前ページ右上のグラフを見ると、屋上緑 化を施した屋上面の温度の日温変化が4℃に対し、非緑化では42℃に達しています。コンクリートの膨張率α=1×10-5とすると、長さ50㎝スラブに対 して非緑化では1日の伸縮量は21㎜にも達し、緑化面では2㎜とは大きくかけ離れた値となっています。これは、屋上面におけるスラブのクラック、躯体壁面での接合部における防水層の損傷などに、大きく影響するものと考えられています。
もう1つの大きな効果として、土壌の緩衝機能による酸やアルカリの中和があります。酸やアルカリはコンクリートに対して悪影響を与えることが判明しており、たとえばph3.0の酸性雨が降ったとしても、土壌を通過した雨水はほとんど中性にかわってしまい、コンクリートに対する影響はないものとなります。
右の写真は、上が非緑化面、下が緑化基盤下のスラブで、表面のフェノールフタレイン反応を見たものです。正常なコンクリートはアルカリ性を呈するものであり、緑化していないスラブにおいては完全に中性化した状態であり、かつコンクリートの劣化から細かいクラックが発生していることがわかります。
このように、屋上緑化は建築物の耐久性を向上させ、防水を目的としたシンダーの耐久性をも大きく向上させる手法であり、建築物所有者にとっては建築耐用年数を高めることで、維持管理や補修費用を削減することが可能となります。
このことを実証するように、最近では屋上緑化を組み合わせることを前提に、シンダーの防水保障期間を20年あるいは30年と延長するメーカーも現れてきています。
PR効果がある屋上緑化
屋上緑化に関して、実際に工事費を負担するビルオーナー側からすれば、屋上緑化に対する投資は、どんな形で、どの程度の期間で回収できるか、という点に一番の関心を抱くこととなっています。
前述したような断熱性の向上による冷房費の節減は、入居する企業のメリットであり、ヒートアイランド現象軽減 や雨水流出緩和効果などというのは、公共的な意義は大きいですが、ビル所有者にとっては何の得にもならないといった意見もあることは事実であります。
そこで注目されるのが、屋上緑化を行うことによるPR効果です。例えば、大阪難波のOCATビルでは、2004年に屋上庭園をオープン し、マスコミに取り上げられることで全集客数が10%程度増えたと言われています。
日本橋三越が屋上庭園を開設したのも、ガーデニング愛好者を屋上に呼び込み、それが階下で買い物をしてゆくという、いわゆる噴水効果を狙ったものであると言われています。
今回の計画は、賃貸や分譲集合住宅の屋上緑化であることから、このような集客機能を期待できるものではなく、屋上緑化の実質的な機能である省エネ効果や、建築物の維持修繕費の削減が可能であることをPRすると同時に、屋上ガーデニングや屋上庭園を利用できるメリットを充分アピールできる、魅力的で洒落たマンションといったイメージを付加することが重要であります。
このような屋上緑化の実情を踏まえ、私たちは屋上空間をひとつの庭園と見立てることで、荷重や環境的条件に適合し、日常の一部としての美しく魅力的な庭を創ることを目指しています。
私たちが提案する屋上緑化
これまでに述べてきた屋上緑化の必要性を考えると、見た目に美しく、屋上緑化のもたらす様々な効果を発揮させることが重要であるものと考えます。
この意味で、今回調査させていただいた物件について、以下に示す内容が不足するものと思われます。
(1)土壌の厚さは調査物件で、芝生地5㎝、潅木類で10㎝程度と薄く、適度な保水性が確保できていない状況です。保水性が確保できないと、屋上スラブの温度上昇を抑制することができず、省エネや建築物保護効果を発揮することができません。
私たちは、芝生地で10㎝、潅木類で20㎝程度の土壌厚さが必要であるものと判断し、計画を行っています。
(2)調査物件では、シンダーの上に直接土壌を乗せた構造となっており、遮水効果や防根効果のある層が無い状態で す。経年変化によりシンダーが防水効果を失った時に有効な遮水層が必要であり、植物の根による躯体の変形が無いように計画する必要があります。また、灌水 後余剰水は速やかに排水されるべきであり、屋上に滞水することがないよう計画することで、遮水性の向上を図ることができます。
私たちは、防水・防根シートを土壌下に敷設することで、屋上の遮水性を確保し、植物の根が及ぼす影響を最小限に留め、暗梁排水管を敷設することで、余剰水の速やかな排水を考えています。
(3)屋上緑化には灌水が必要不可欠であり、季節によって臨機応変に対応することが健全な緑の生育に繋がるものと考えます。調査物件では、散水ホースによる手撒きで灌水が行われていますが、夏季には結構頻度の高い灌水が必要となり、手間のかかる作業となっているのではないでしょうか。
私たちは、ソーラ電源を利用した電磁弁コントロール方式による自動灌水装置を設置し、省管理型の屋上緑化を計画しています。
(4)屋上緑化の直接的なイメージアップとしては、美しく魅力あるガーデンを創り上げることが重要であるものと思われます。調査物件では地被類が多く用いられ、コンテナによる中木性の樹木が配置されていますが、立体的な緑の構築ができていないために、魅力ある庭またはガーデンとなっていないように見受けられます。一般的に、花や草類の彩りや香り、潅木や中高木性の樹木が演出する立体的な緑が、美しい庭、鑑賞に堪えることができるガーデンを創るものと考えられます。
私たちは、地被類、潅木類、中高木性の縁が織なす、季節感があり、彩が美しく緑のボリュームを感じることができ、日常的に利用したくなる庭やガーデンを目指しています。
施工写真から今回の調査物件を題材に、私たちが計画する屋上緑化の例を示します。
屋上緑化計画平面図
富山県M病院(決定)
屋上緑化施工写真
富山県M病院
屋上緑化完成写真
富山県病院
福井老人福祉施設屋上緑化
(回遊式屋上庭園)
≪写真≫ A試験
弊社であは平成23年8月より折半屋根緑化の試験を実施しています。1基約2㎡のブロックで囲まれた建物を想定し日々折半上部温度とブロック内温度差の比較をおこなっていす。
≪目的≫工場など夏期の室内温度を下げることにより環境等に役立つ工法と考えています。(CO2削減、冷房費減または冬季間の暖房費減等)植物選定についてはあまり灌水が必要でない植物の選定とする。
≪写真≫ 試験B
折半屋根に発砲スチロールを固定し土壌改良10㎝を敷き多品種の緑化を考える
(植物、四季咲きなでしこ、ヤブランマット使用)
≪写真≫ 試験C
折半屋根に止水シート行い土壌改良10㎝+有機質改良材10㎝での試験
(植物、四季咲きなでしこ、ヤブランマット使用)
上記折半屋根に加わる加重については発砲スチロール.弊社改良材.植物を含め
0.048t/㎡=48kg/㎡ < 60kg/㎡
≪温度測定データー≫ (室内温度差)
※ グラフが示すようにA.緑化なし B、C.緑化ありでは平均で温度差の違いがわかる。 温度差はAに対しB、Cは約3度から4度低くなる。今後は冬季間までデーターをとり温度差を確認したい。
※ 上記の通り表面温度差や素手での温度の違いがわかるように屋上での熱気が感じない素材ではないかと思われます。(現在試験継続中)